小説 「メスメルのイベント」
「メスメル」と言えば、世の認知度は計り知れない。が、私はフランスの有名ブランドであるということ以外、あまり知らない。
その「メスメル」が、今年のテーマとして掲げたのが「インド」であった。
さる制作会社が知り合いで、毎年、このメルメスのイベントに関わっていた。
「インド」と聞いて、この世界に暗い知人は、幸いにも私を思い出してくれた。
「今年はインドなのでよろしく」と聞き、リサーチに近くのショップに足を運んだ。入ったこともない店内。
「いらっしゃいませ」とか言われないように、こそこそ忍び込み、ちらちら商品を観察し、冊子を奪うように手にし、ショップを出た。どこがインドなのだ?よくわからなかった。
そのうち、新聞やバスストップの看板にセンスのいい広告が出始め、私が知っているインドとは違うインドなのだと知った。
春に、いくつかのイベントをお手伝いし、6月いよいよ発表会と称するビッグイベントに
関わることとなった。
南北インド音楽のミュージシャンは、全員友達+友達の紹介で固め、インドからの招聘アーティストも
知り合いインド人のツテ・・・。知り合いづくしで「メルメス」に耐えられるのか・・・? 不安でもあった。
が、制作会社の人が、落ち度をしっかりフォロー、助けてくださり、本番は想像を超えた素晴らしいものとなった。
ところで、CNC的には、裏方ばかりでは・・・という、御計らいで、出演の段取りを整えていただいた。
それは、思いもよらぬ、フランス人歌手とのコラボであった。
バスカルというインドポップスも歌う歌手で、お友達と来日。
不覚にも、私はバスカルを知らなかったので、ネットで調べていると、一緒に来日するお友達バトリックこそ、いまや世界で注目を集めつつある建築家であった。
私の娘が今年の冬、仕事でパリに行った時、彼の作品を見て、偉く感激してたくさん写真を撮って来たのだった。それがまさに、そのお友達だとわかった瞬間の驚きはなかった。
いよいよ、本番前日、バスカル氏と、お友達バトリック氏に会った。
二人を見た途端、何故かワクワクしてしまい、他の人を押しのけて、Hello! How are you?
とか言ってしまった。そんな自分に自分で驚いた。
打ち合わせが始まっても、めちゃめちゃなハイに見舞われ、歌ったり踊ったりはしゃいだりとなった。
バスカル氏たちも、座るなり「sake」をお燗で飲み始め、来日直後にもかかわらず、元気で対応してくれた。
私は、前日まで、CNCの皆と小道具を作ったり、リハをしたりしていたので、睡眠不足と過労でナチュラルハイだったのかもしれない。特に、小道具に懲り、布もダメだと思ったら、また買いに行ってもらったりして、レッスン時間を削ってもやった。
が、もしこれらがバスカル氏によって、すべて却下されてしまったら・・・不安もあった。しかし、彼は「思ったとおり、いいアイディアだ」と賛成してくれた。
打ち合わせが終わり、事務所に着くと、突然緊張が解け、気を失ったように2時間爆睡。
明日が本番なのに・・・。
そして、本番。たった3時間の仕込み、300人のスタッフ動員で野外スペースは瞬く間に
「この世ではない、インド」に変わった。
打ち合わせで、どんな照明器材がどのように仕込まれかは知っていたが、それでこんなに幻想的、かつ多彩な色合いが現れるなどとは想像できなかった。装置も、建物に映し出された映像も信じられないほど、センスが良く、息を飲むほど。サーブされた食事も、フランス料理ではあるが、ターリーの上にバナナの葉を乗せ、その上に上品に盛り付けられている。京風インド料理・・・?
残念なことに味わっていないので、薄味かどうかは定かではない。
ラスト、CNCの出番。バスカル氏も一緒に歌い踊り、楽しい本番だった。が、自分的には、これほどの舞台が用意されることを知らず、もっときちんと準備してやりたかった・・・やりそこなったことばかり頭によぎり、残念な思いでいっぱい!!
ああ、世界の「メルメス」は、本当に幻影。世の中には、限りなく素晴らしいセンスと、それを駆使した仕事があるのだな・・・と思い知った日であった。
いつの日にか、CNCも・・・と決意新たに、再出発を誓う私であった。
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